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地方の飲食店で働くということ。——メリットもデメリットも、正直に書く。

田舎の飲食店の働き方とメリット・デメリット
目次

    3月の半ば、昼のピークが過ぎた頃だった。

    休憩に入って、店の裏口から外に出た。1月まであれだけ重たかった空気が、その日はほんのり暖かくて、思わず「ふぉー」という声が出た。春が来る。そんな気配が、肌で分かる日だった。

    駐車場の向こうで、近所のおじさんたちが立ち話をしている。何を話しているのかは聞こえない。でも、笑い声が風に乗ってこっちまで届いてくる。

    「BBQでもしたいな」

    誰に言うでもなく、そう思った。

    こういう瞬間がある。忙しい営業を終えた後に、ふっと力が抜けて、なんでもない景色にほっとする瞬間。これは都会のラーメン屋では、たぶん味わえない。

    僕は富永一力。株式会社LICTの代表で、魚沼市で「らーめん極」と「らーめんいちぶ」の2店舗を経営している。生まれも育ちも魚沼。ずっとこの土地で飲食店をやってきた人間だ。

    今日は「地方の飲食店で働くって、実際どうなの?」という話を、正直に書こうと思う。良いことも、そうでないことも。


    忙しすぎない、ということ

    誤解しないでほしいのだけど、暇だという話ではない。ピークタイムは当然忙しい。土日の昼なんて、注文票が次から次に飛んでくる。

    ただ、都会の繁盛店と比べると、一日の中に「余白」がある。

    14時を過ぎると、店内は静かになる。さっきまでバタバタしていた厨房に、ふっと穏やかな空気が流れる。スタッフ同士で「今日のピーク、やばかったね」なんて笑いながら、仕込みをしたり、掃除をしたり。ゆったりとした時間の中で、次の営業に向けて準備する。

    都会の繁盛店だったら、この時間も回転が止まらないのかもしれない。ずっとフル稼働で、気づいたら閉店。工場のラインみたいに、ただ目の前の作業を捌くだけの一日になる。

    うちはそうじゃない。忙しい時間はしっかり忙しくて、落ち着く時間はちゃんと落ち着く。このメリハリが、地方の飲食店の良さだと思っている。


    休憩時間の過ごし方

    地方の飲食店ならではだな、と思うことがある。休憩時間の過ごし方だ。

    うちのスタッフは、休憩はそれぞれだ。家に帰る人もいれば、店でスタッフ同士でおしゃべりをする人もいる。車で休憩しながらスマホで動画を楽しむ人も。

    これが都会だったらどうだろう。狭い休憩室で、隣にスタッフがいる状態で休憩する。それが嫌だとは言わないけれど、やっぱり自分だけの空間で過ごす休憩や和気藹々とゆったりした時間を過ごすのとは質が違う。

    車のドアを閉めれば、そこは完全にプライベートな空間だ。好きな音楽をかけてもいい。誰にも気を遣わなくていい。2時間の休憩を、本当の意味で「休む」時間にできる。家に帰って束の間の休憩で家族と話してもいい。店でダラダラするのも季節の風邪を感じられる。

    たかが休憩、と思うかもしれない。でも飲食店の仕事は体力勝負だ。この「割とちゃんと休める」ということが、夜の営業を乗り切る力になる。うちの会社は2時間休憩を取ることも多いから、地味だけど、地方で働く隠れたメリットだと思う。


    知り合いが暖簾をくぐってくる

    魚沼で飲食店をやっていると、お客さんに知り合いが多い。これは都会ではなかなかないことだと思う。

    特に嬉しいのは、都会に出ていた友人が帰省のたびに食べに来てくれること。「やっぱりここのラーメンだわ」なんて言いながらスープを飲んでいる姿を見ると、この仕事をやっていて良かったと素直に思える。

    ただ、正直に言うと、ちょっとやりづらい場面もある。

    「知っているけど、あまり話したことがない人」が来たとき。声をかけるべきか、普通のお客さんとして接するべきか。一瞬、迷う。地方で商売をしている人なら、この微妙な距離感はわかってもらえると思う。

    でもまあ、これは贅沢な悩みだ。自分が作ったラーメンを、顔の見える人たちが食べてくれている。それだけで、十分なことだと思う。


    駐車場と、歩き出勤の話

    地方で働くうえで「駐車場に困らない」というのは、地味だけど大きい。

    うちは店舗の隣に無料の駐車場がある。毎月の駐車場代はゼロ。都会で車通勤なんてしようものなら、駐車場代だけで月2〜3万円は飛んでいく。そもそも駐車場が確保できないことのほうが多いだろう。

    それから、たまに歩いて出勤する日がある。

    いつもは車で数分の道のりを、あえて歩いてみる。すると、車では気づかなかった景色が目に入ってくる。田んぼの色が変わっていたり、知らない花が咲いていたり。同じ道なのに、季節によってまったく違う顔を見せる。

    「今日は気持ちいいな」と思いながら歩く朝は、一日の始まり方が少しだけ違う。これも、都会のラーメン屋ではなかなか味わえないことだと思う。


    ここからは、デメリットの話をする

    良いことばかり書いても仕方がない。地方の飲食店で働くことのデメリットも、正直に書く。

    給与水準は、都会より低い

    これは事実だ。飲食業界全体が高いとは言えない給与水準の中で、地方はさらに低い傾向がある。求人票を見ていれば分かる。都会の飲食店のほうが、数字は大きい。

    うちも例外ではない。1年目の未経験入社で年収280万円。これが現実だ。

    ただ、ひとつ言いたいことがある。うちは固定残業代がない。働いた分は、1分単位で全額支払う。サービス残業もない。「月給は高いけど、実は固定残業60時間分が含まれていました」みたいなことは、絶対にやらない。

    そして、会社としては利益をもっとスタッフに還元できるように、日々何をすべきかをスタッフと一緒に考えている。「給料が低い」を仕方ないで終わらせたくない。それが正直な気持ちだ。

    車がないと、正直きつい

    魚沼は電車やバスの本数が限られている。車がないと、通勤はもちろん、日常生活自体が不便だ。

    過去に車を持っていないスタッフがいたことがある。歩いて通勤していた。それ自体は問題ないのだけど、たまに「ちょっと買い出しに行ってくれない?」というお願いができない日が出てくる。本当にたまにだし、大したデメリットではないかもしれない。でも、車はあったほうがいい。これは正直にそう言っておく。

    出会いと刺激は、少ない

    僕自身はそこまで気にならないけれど、若いスタッフにとっては気になるポイントかもしれない。

    魚沼はイベント自体が少ないし、あったとしても顔見知りが多い。「声をかけてみたら、知り合いの知り合いだった」なんてことはよくある。出会いを求めるには、正直なかなか厳しい環境だと思う。

    刺激についても同じだ。毎日の景色はそんなに変わらない。街が大きく変わることもない。日々のルーティンの中に、変化を求めるのは難しい。

    ただ、これは考え方次第でもある。「同じことの繰り返し」を退屈と感じるか、「安定した日常」と感じるかは、人による。僕は後者だ。でも、すべての人がそう思えるわけじゃないことは分かっている。でもきっと、なんか時間がゆっくり流れている感じとか、知り合いで囲まれてる感が嫌じゃない人は田舎の生活が向いているとも言えるかもしれない。


    それでも「悪くないな」と思える理由

    デメリットは確かにある。給与は都会より低いし、車は必要だし、刺激的な日々とは言い難い。

    でも、3月の半ばのあの日。店の裏口から外に出て、ほんのり暖かい空気を吸い込んで、おじさんたちの笑い声を聞きながら「BBQしたいな」と思った、あの瞬間。

    あの時間があるだけで、僕は「悪くないな」と思えている。

    昼のピークを全力で駆け抜けた後のゆったりとした空気。束の間の休憩時間。都会から帰ってきた友人が「やっぱりここだわ」と言ってくれる瞬間。歩いて出勤する日の、季節ごとに表情を変える景色。休みに家族で公園で遊べること。

    全部、些細なことだ。でも、その些細なことの積み重ねが、毎日を「悪くないな」にしてくれる。

    地方の飲食店で働くことが、すべての人にとって正解だとは思わない。都会のスピード感や給与水準を求める人には合わないかもしれない。それは素直にそう思う。

    でも、もしこの記事を読んで「なんか、このかんじすき・・・」と少しでも思ってくれた人がいるなら。うちのラーメンを食べながら、この空気を感じてみてほしい。

    それで「やっぱり違うな」と思ったら、それでいい。でも「悪くないな」と思えたなら、きっとこの場所で楽しく働ける人だと思います。

    田舎は少子高齢化や田舎離れが進んで、どんどん人口も少なくなっている現実はある。けどそこにもきらりと光るものがあったり、平凡という感謝すべき何気ない当たり前が感じられる。そんな生活をともにしたい人はうちで働くことに興味を持ってくれたら嬉しい。

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