飲食店経営者が生成AIで業務アプリを作ってみて見えたこと

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― 小さな田舎の飲食店でも、テクノロジーで化ける可能性がある。

皆さん、こんにちは。富永です。

今日は、僕が最近取り組んでいる「生成AIを使った業務アプリの自社開発」について書いてみようと思います。

新潟県魚治市でラーメン店2店舗を運営している、スタッフ20人弱の小さな会社です。「飲食店がアプリ開発?」と思われるかもしれません。正直、僕自身も「アプリ開発」なんて大企業がやることだと思っていました。

でも、実際にやってみたらいろいろなことが見えてきました。

良かったことも、正直まだ課題だなと感じていることも、全部含めて書いていきます。同じように「AIを使いたいと思っているけどどんな使い方したらいいの?」と感じている経営者の方はたくさんいると思うので、具体例を交えて書いていきます。特に、地方で店舗ビジネスをやっている経営者の方に読んでもらいたい内容です。参考になれば幸いです。

きっかけは「インスタの文章が書けない」問題

最初に作ろうと思ったのは、Instagramの投稿文章をAIが作成してくれるアプリでした。

インスタの運用をスタッフに任せたいと思っていたんですが、「文章を作る」という部分がハードルになっていました。写真は撮れる。でも、それに添える文章を考えるのが難しい。これは飲食店あるあるだと思います。「料理を作るのは得意だけど、それを言葉で伝えるのは苦手」というスタッフは多いんじゃないかなと。

厳密には写真撮るのも難しいスタッフもたくさんいるので、Googleドライブにカメラで撮った写真は溜めてまして、共有フォルダで使えるようにしてます。

当然、外注することも視野に入りました。でも、田舎の飲食店ではさすがに費用対効果が合うことは珍しい。

大体インスタ運用というと、月額5万円前後〜の業者が多いと思うんですけど、数年スパンで見ていかなければいけない施策ですし、元を取ることを考えると粗利が60〜70%の飲食店にとってはかなり厳しいのが現実な店舗が多いはず。というか単独の店舗で運用するのはほとんどの店舗が難しいでしょう。

それに、実際の来店を図るということは厳密には難しいので、費用対効果が本当に合っているのかというのも難しい問題。

これは地方で飲食店をやっている方なら共感してもらえると思うんですが、「やった方がいいのはわかっている。でもお金をかける余裕がない」というジレンマです。だったら自社でなんとかしようと。そこで思いついたのが、「条件を選択するだけでAIが文章を作ってくれるアプリ」でした。

「また社長が何か始めた」という空気

正直に言うと、スタッフの反応は「また社長が何か新しいこと始めたな」という感じだったと思います。

ただ、僕自身、会社を成長させたいという思いや、このまま会社が大きくなっていったときに統率がとれなくなりそうだという危機感は、日頃からスタッフに伝えていました。だから反対されるというよりは、静観しているという表現の方が近いです。

周りの経営者仲間も、「AIでアプリを作っている」と話しても、あまり興味を持つ人は多くない印象でした。特にWebやパソコンが苦手な人にとっては、「よくわからないもの」という印象なのかもしれません。

でも、それでいいと思っています。新しいことを始める時、最初から全員が理解してくれることなんてまずない。大事なのは、作ったものが実際に現場で役に立つかどうか。そこで結果を出すことが、一番の説得力になると信じています。

実際に作った4つのアプリ

インスタ投稿アプリをきっかけに、結果的に4つの業務アプリを作りました。

① Instagram投稿文章作成アプリ

その日の天気や曜日、ターゲット、投稿の目的、おすすめメニューを選択肢から選ぶだけで、生成AIが投稿文章を作成してくれます。裏側では店舗情報や文章の構成ルールを設定してあり、担当者が作成→管理者が承認→投稿という業務フローも組み込んでいます。投稿完了時には社内Slackに通知が飛ぶ仕組みです。

これはかなり実用的に使えています。

② シフト作成アプリ

スタッフが1店舗10人を超え、複数店舗の掛け持ちもある中で、シフト作成は担当スタッフにとってかなりのストレスでした。スプレッドシートでの作成は使いづらく見づらい。条件が多岐にわたると限界があるなと感じ、アプリ化しました。

作成の手間はかなり効率化されるし、シフトを組んだ段階で概算の人件費がわかるような機能も追加。同時にスタッフの戦力管理表としての機能も持ち合わせていて、教育にも活用する予定です。

③ 給与計算アプリ

勤怠漏れの確認、基本労働と残業時間の切り分け、複数のデータ間のコピペ作業。手動での給与計算は、条件を一つずつ見極めながら進める必要があって非常に大変でした。勤怠データから自動で給与を計算し、賌金台帳や出勤簿、源泉徴収簿なども自動で作成してくれるアプリにしました。

ちなみに、計算したデータはSmartHRに投げて、スタッフに共有しています。SmartHRはいろいろな手続きや資料作成の機能が豊富なので、現状では給与計算アプリと併用して活用しています。

ちなみに、ほとんどの飲食店は本当にやってる?と思うのが月跨ぎで週40時間を超える時の残業時間の計算です。これはかなり見落としがちだけど、法律的にはクリアしないといけないところなので、そこも自動で計算できるようにしたところは我ながらかなり嬉しいポイントです。

④ 在庫管理アプリ

発注担当が休みの日が続くと発注漏れが起きたり、わざわざ休みの日に在庫確認しなければならないという問題。オンラインで在庫がわかるようにし、併せてその日の仕込み作業も確認できるように拡張しています。

これはまだまだ開発段階だけど、きっと役にたつと信じている。

どうやって作ったのか

僕はもともとWebサイトを作るくらいの技術はありました。HTML、CSS、JavaScript、PHPなんかはある程度触っていたので、全くのゼロからのスタートではないです。ちなみにアプリを開発する上では、言語だけ勉強しても難しいことが結構いっぱいあります。

どうやってデプロイ(世の中に共有)するの?データベースって何?GitHubで開発の流れを記録していくとか。そもそもWebってどんな仕組み?みたいな。この辺は初心者がよく陥りがち。

ただ、今回はClaude CodeというAIツールがあまりに便利だったので、思い切ってNext.jsやデータベースを連携したモダンな形で作りました。わからないことが出てきたらその都度Claudeに聞きながら進めていったら、割と形になりました。

初めてモダンなUIでアプリが動いた時は、素直に「おお!」と感動しました。タイピング自体は割と抵抗がないので、スラスラ進んでいった感覚もあります。「プログラミングができないとアプリは作れない」という時代はもう終わりつつあるのかなと。少なくとも、基礎的なWebの知識があれば、AIと一緒にかなりのところまで作れる時代になっています。

ただ、甘くなかった部分もある

スラスラ作れたと書きましたが、苦労した部分も正直に書きます。

特に大変だったのが認証機能です。うちのアプリは複数の業務アプリに一つのログインで入れるようにモノレポ化したんですが、この認証部分でかなりつまづきました。セキュリティの観点からもかなり注意を払って、何度も調べました。スタッフの個人情報や給与データを扱う以上、ここは絶対に手を抜けない部分です。セキュリティは強固にすればするほど、ユーザーの手間がかかることもあって、ログインするのに面倒くさくなってしまっては使われなくなるというジレンマがあって、これはきっとみんなが頭を悩ませるところです。

それと、将来的に「スタッフがこのアプリを日常的に使っている姿」は描けたんです。でも、そこにたどり着くまでの道のりはまだまだ長い。アプリ開発の初心者である以上、今後の開発やメンテナンスへの不安は正直あります。でも、その不安も含めて「やってみないと見えなかったこと」なので、やった価値はあると思っていますし今後も続けていく方針です。

作ってみて良かったこと

零細企業でも効率化の可能性が大いにある。

これが一番大きな気づきです。「アプリ開発」なんて大企業がやることだと思っていました。でも実際にやってみると、僕たちのような小さな会社でも、現場の課題に合わせたアプリを作ることができる時代になっているんだと実感しました。それに、世の中の便利なツールはあるけど、会社ごとに細かいルールがあったり、運用で自社オリジナルの部分があるので、自身で作るとそこをカスタマイズできるのは最大のメリットです。

社長ではなくスタッフが取り組みやすくなる仕事が増えた。

アプリ化することで、「社長しかできない仕事」が減りました。インスタの投稿がその代表例です。文章を考えるというハードルが下がったことで、スタッフが主体的に取り組めるようになりました。

これまでもGoogleワークスペースを活用して、かなりスタッフにも浸透してきたんだけど、最後に「使いづらい」「さわってはいけないところをいじってしまう」などの問題が出てきてしまう。これがアプリの最大の良いところだと思う。直感的にわかりやすい。使いやすい。だから誰でも使える。

業務時間が月に10時間は効率化されたかも。

給与計算やシフト作成にかかっていた時間が大幅に減りました。月に10時間というと小さく聞こえるかもしれません。実際その通りではあって、まだまだ課題は山積みです。でも小さな一歩が今後に生きると期待。

正直、まだ課題だなと感じていること

良いことばかり書いてもリアルじゃないので、正直に課題も書きます。

現状の業務をアプリ化するのは、思った以上に細かい。「これをアプリにすれば便利になる」と思って作り始めると、「この場合はどうする?」「この通知がないと不便だな」「前のやり方の方がよかった部分もあるな」といった細かな要件が次々に出てきます。細かな機能もつけないと、実戦では使いづらいんですよね。

意外と効率化できない部分もある。アプリを作ったことで新たなタスクが生まれることもあります。アプリのメンテナンス、スタッフへの使い方の説明、不具合があった時の対応。「アプリを作れば全部解決」とはならないのが現実です。

世の中のSaaSはよくできている。これは実際に作ってみないと見えなかった視点です。自分で作ってみて、改めて既存のSaaS製品の完成度の高さに気づきました。開発にかかる時間と労力を考えたら、SaaSを利用した方が良いケースも大いにあります。なんでも自社で作ればいいわけじゃない。これは大事な学びでした。

とはいえ、いろんなSaaSを使ってたら毎月半端じゃない出費が出るのも現実です。これが小規模店舗ビジネスの難しいところ。

描いている未来

課題はありつつも、僕の中では「こうなったらいいな」という未来像が描けています。

例えば、スタッフが毎日朝出勤して、店舗業務をこなしながら、すきま時間にPCやスマホからインスタ投稿をしたり、シフトを作成したりする。飲食店は「待ちの商売」なので、よっぽどの繁盛店でない限り、仕事の合間時間というのがどうしても発生します。その時間を、ただ待つのではなく、生産性のある時間に変えられる。

将来的には、労務も会計もマーケティングも、スタッフがアプリを使いながらいろんな提案をしてくれたり、「もっとこうしたら良くなる」ということを自分で考えて実行してくれる。そうなったら、一人当たりの生産性が高まるだけでなく、スタッフの働き方・生き方がもっと豊かになると信じています。

アプリ開発に限らず、生成AIとの付き合い方は今後の経営で避けて通れないテーマだと思っています。

漠然としたイメージかもしれません。でも、この「描けた」ということ自体が、アプリを作ってみたからこそ得られたものだと思っています。

小さな田舎の飲食店でも、テクノロジーで化ける可能性がある

今回アプリを作ってみて一番強く感じたのは、「小さな田舎の飲食店でも、テクノロジーで化ける可能性を秘めている」ということです。

もちろん、課題はたくさんあります。全部がうまくいったわけではないし、SaaSを使った方がいい場合もある。でも、「自分たちの現場の課題を、自分たちの手で解決できるかもしれない」という選択肢が生まれたこと自体が、すごく大きな一歩だと思っています。

生成AIの進化は本当に速いです。今日書いたことも、半年後には古くなっているかもしれません。でもだからこそ、「まずやってみる」ことが大事なのかなと。

僕たちのような小さな会社でもこれだけのことができるんだから、ある程度の規模の会社ならなおさらチャンスは大きいはず。従来ならアプリ開発に数百万、数千万円かかるのが当たり前の世界でしたが、そこまでの予算を割けない会社にも道が開けた。これはマジでチャンスです。

最後に

もしこの記事を読んで「何かやってみたいけど、何から手をつければいいかわからない」と思った方がいたら、一つ提案させてください。

毎月の仕事で一番不安なこと、面倒臭いと思っていること、「こうなったらもっと良くなるのに」と思っていること。まずはそれを書き出してみてください。

そして、一度その意見を生成AIに投げてみてください。壁打ちしているとアイデアが浮かんできたり、自分自身が思っていることがすっと整理されたりします。僕自身もそうでした。

それでも「やっぱりよくわからない」「誰かに相談したい」という方がいれば、僕でよければ壁打ち相手になります。お気軽にご相談ください。僕たちの経験が少しでもお役に立てるかもしれません。

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